『ひとひら(4)』−立ち上がる物語

ひとひら 4 (アクションコミックス)

ひとひら 4 (アクションコミックス)

死ぬまで生きている、という当たり前のことを書くまでもなく、生という物語の中には明確な区切りが存在しません。ひとつの事件が終われば日常に帰り、やがて新しい事件に遭遇する。そんな平坦な世界の中で僕たちは生きています。
けれど、人生の中には確かに「これが節目だった」という幻想を与えてくれるような事件が存在します。そしてその事件に遭遇した瞬間、そこに至るまでの何でもない時間までもが特別な意味を持ち始め、過去から立ち上がってくるのです。これが物語の生まれる瞬間ではないかな、と。
さて、『ひとひら』の第4巻を読みました。見所は何といっても親友との別れ、そして先輩たちの卒業です。
それぞれが「今そこにいるあなた」への感謝を口にし、同時に「今へと繋がった過去の思い出」をかけがえのないものとして抱きしめるその瞬間、作中で直接描かれなかった時間も含めた「平凡な日常」が特別な意味を持って浮かんできます。その時間を描いたわずか数ページに『ひとひら』の魅力は凝縮されていると感じますね。
そして新しい一歩を踏み出した主人公。踏み出した先はなぜかコメディの世界だったという意外な展開ですが、「新しい一歩」が決してゼロからのスタートではない以上、彼女の活躍も期待できそうです。