正義の味方は大変です〜『陸上防衛隊まおちゃん』と『ザンボット3』〜

陸上防衛隊まおちゃん DVD-BOX

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KBS京都では最近『陸上防衛隊まおちゃん』の再放送をやっているので、毎週眠い目をこすりながら見ています。
ざっとあらすじを紹介すると、可愛いエイリアンが日本を侵略しに来たので可愛い幼女たちが正義の味方として防衛隊に入りエイリアンと戦う、という脱力しそうな話。wikipediaの記述だと一部では「美少女の皮を被った右翼マンガ」なんて言われていたそうですが……まあ、世の中には色々な人がいるということですね。
主人公たちは防衛隊員としてダメダメなんですが、可愛い幼女だから洒落にならない事態を引き起こしても「まあ、仕方ないか」で済まされてしまう。そんなわけないだろ、と思わずツッコミを入れたくなる話です。また、冒頭は毎回絵日記のアップからで、物語の平面性、単純さが強く印象付けられます。何というか「これはフィクションです」という自己主張をしているみたいですね。
「正義の味方が悪をやっつける」なんて話を信じるには、社会は複雑すぎるし、人間は弱すぎることを僕たちは知っている。だからファンタジィの中に封じ込めるしか、ないのでしょうか?
さて、「正義の味方」を描いた作品としてもうひとつ、『ザンボット3』を取り上げてみようと思います。こちらは『まおちゃん』とは反対に、リアリティのある「正義の見方」の姿が描かれていまるという点で印象深い作品です。スーパーロボット大戦』でこの作品を知ったという方も多いでしょうが、ポップな絵柄とは裏腹にめちゃくちゃシビアなお話です。具体的にどうシビアかと言えば、主人公たちは敵と戦う前に世間と戦わなくてはいけないんですね。巨大ロボットに乗って戦えば街は壊れるし死者もでる。主人公たちは「異星人から人々を守っているんだ」と思っているのですが、守られている人々にしてみれば「余計なことをしてくれたな」となる。『ザンボット3』はそんな行き違いを描いた作品でした。
最終回は特に秀逸。異星人のボスは主人公に「お前たちは地球人を守っているつもりだろうが、地球人はお前たちに感謝なんてしていないぞ」と告げるのですが、主人公は「そんなことない!」とつっぱねるわけです。はたして、帰ってきた主人公に地球の人々がよってきます。「お帰りなさい!」おお、主人公はちゃんと感謝されていたのか……という風には全然見えないところが面白い。主人公のところに人々が駆け寄ってくるシーンはほとんど夢幻のように描かれていて、この話を考えた富野監督が「正義の味方が悪を倒してめでたしめでたし」なんてハッピーエンドを信じていないのがバレバレなんですね。
人間爆弾が作られたり、主人公の仲間が皆殺しになったりと、実は『イデオン』に匹敵するくらい残酷な話だったりします。黒富野の代表作のひとつとして挙げられるでしょう。主人公が萌えキャラだったら明るい話になったのに……と悔やまれてなりません(嘘)。