夢見る図書館

キャンパスの中を歩いていた。この時期はどこの大学も一年生で溢れかえっているのだけれど、彼らを見ると現実を直視したような気分になって、かえって気分が落ち込んでしまう。
彼らは毎日規則正しく講義を受ける。結構なことだ。5月になり、6月になるころには、どの教室でも空席が目立ちはじめるだろう。それもまた結構なことだ、と僕は思う。提供されるモデルが現実の写しである以上、モデルは常に不完全なものでしかない。その不完全さに気付いた時から学問は始まるのだろう。自分の代わりに先生が考えてくれるわけではない。
お昼過ぎなってから、図書館の書庫に入った。少しかび臭いのだけれど、僕はその匂いが嫌いではない。書架にはいつも製本を待つ雑誌が積まれている。マイナな洋雑誌のものも含まれていて、これを読む人がいつか現れるのだろうか、なんて考える。「いつか」を夢見て、本は眠っていた。
そこではコーヒーが飲めないという重大な欠点があるため、あまり長くいられない。検索してボルヘスの『伝奇集』を探し出し、必要な部分をコピーした。先日crow_henmiさんから薦めて頂いた本。「ドン・キホーテの著者、ピエール・メナール」は通して読んだけれど、もう1、2回読んでから感想を書く予定。しばしお待ちを。
マイナな本を借りるたび、この書庫は自分を待っていたのではないか、なんて考える。そんな思い上がりを軸に、楽観と期待を車輪にして、世界はゆっくりと前に進んでいるのだろう。