新参オタクには特に時間がない

「おたくをやるには人生も一日も短すぎる」
 おおむね同意なのだけれど、でもじっさいに昨年のアニメを振りかえってみても、必見の傑作は何作もないとも思う。
(中略)
 ようするにたいしておもしろくもない作品まで見る必要があるのである。これはもう、純粋な趣味というよりもお勉強に近いものがある。
 単純におもしろいものが見たいだけなら、作品選定の水準は高く設定したほうがいいだろう。そのかわりジャンルの幅を広げてみる。
 現在、オタク的と評される作品はじつに多岐にわたっているので、それぞれのジャンルの上位3%くらいだけたのしむようにすればいい。
 濃くも深くもない、しかし広く豊かなつまみ食いオタクライフである。
 何なら「オタク」という枷も捨ててもいい。そうすれば、一生かけて見たり読んだりしても、最高水準の傑作がなくなることはないだろう。
Something Orangeより―

id:kaien氏への批判ではありませんので、誤解なさらないよう。
確かに「昨年の」アニメの中から傑作だけを見ようとすれば、全然無理がない、スマートなアニメライフが送れるのだろうな、と思います。しかし「昨年の」という縛りをなくせば、飛躍的に傑作の数は増えるわけです。それこそ一生かけても全部は見られないくらい。
例えば僕の場合、本格的にアニメを見ようと決めてから、まず最初に見始めたのが『機動戦士Vガンダム』でした。これが2年前の話。
はじめてそのジャンルに入ってきた人にとっては、10年前の作品も現在放送中の作品も全て等価であり、区別する必要を全く感じません。本屋さんではクリスティが現代の作家以上に揃えられていますよね。あんな感じ。僕がミステリィを集中的に読んでいた頃も、クリスティ、カー、クイーン、日本人だと夢野久作や乱歩、横溝正史ばかり読んでいたような気がします。
しかし、旧作の中に傑作がたくさんあるからといって、これ以上新作においていかれるのもなんだか悔しい。そのため新参のオタクは「新作の中から傑作を探す」作業と「旧作の中から傑作を探す」作業を両立させていくことになります。後者は評価が確立している分、楽なのですが、それでも時間的には苦しい。
それでもやめないのは、新作にも旧作にも、私の知らない傑作がたくさんある。それを見ていないのに、他のジャンルだなんて。みたいな理由からです。
しかし、色々なジャンルに手を出す有効性については全く同感。
「萌え」「百合」「寝取られ」「ツンデレ」「京アニクオリティ」etc作品を決まりきった言葉に当てはめているだけのレビューを散見しますが、そういうのってやっぱり作品制度に毒されているからじゃないかなぁ、と。
やはりオタクは「サブカル英雄時代(今考えた)」に終わりを告げ、細分化の方向へ進まざるを得ない。アジモフみたいな人間百科事典は無理。それを理解した上で、他のジャンルを3%ずつくらい知っておく。85:3:3:3:3:3くらい(適当)の比率がベストではないかと思います。