NOIR

「この子の名前……。もし……もしこの子に名前があるなら、私とは違う。ただ迷子になっただけ。私には名前がない。ユウムラキリカという嘘があるだけ……」

ノワール」とはフランス語で「黒」を意味する言葉ですが、「フィルム・ノワール」となった場合は、1940年代から50年代に製作された、重苦しくて、閉塞的で、凶暴な犯罪映画群を指すようになります。
登場する女性の多くが「悪女」、というのも大きな特徴に挙げられるでしょう。彼女たちは「ファム・ファタール」(運命の女、危険な女)であり、側にいる男たちを破滅させる。では、男が登場しないフィルム・ノワールはどうなるのだろう?
というわけで最近DVDレンタルが始まったこんなのを紹介します。

NOIR(ノワール) Vol.11 [DVD]

NOIR(ノワール) Vol.11 [DVD]

主人公は記憶喪失の少女・夕叢霧香とイタリアマフィアの娘・ミレイユの2人。2人は謎の「繋がり」によって出会い、「ノワール」の名前で暗殺業を営むようになります。もうひとつの重要キーワードは、これも謎の組織「ソルダ」。暗いベールの中に隠された因縁を廻って、ノワールはソルダとの暗闘を繰り広げることになります。
この作品が、暴力と犯罪を犯罪者の側から描いたその他の作品とは決定的に異なるものにならしめている要因、それはこの作品のあらゆる部分において見出すことの出来る詩的センスではないかと思いました。
人が死んでも血は出ない、アクションの要所に挟み込まれる「影絵」の演出など、ある意味ではリアリティの対極に位置する作品です。しかし、セリフの端々や演出がいちいち品が良い。裏社会を描く作品’らしからぬ’内容であると思います。アニメ版表現主義、と言っても間違いではないかもしれません。
声優では桑島法子三石琴乃の組み合わせ、音楽では梶浦由記ALI PROJECTとの組み合わせと聴き所も多い作品です。特に『コッペリアの柩』はアリプロのベスト(現時点)だと思いますので、OPだけでも見る価値があるでしょう。
監督の真下耕一氏による作品はだいたいいつもこんな感じ。首尾一貫しているので、『NOIR』が気に入った人は同氏監督の「MADLAX」なんかも楽しめるのではないでしょうか。
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