R.O.D -THE TV-

俺は何十年も本を売ってきたが、不思議なものだ。本は心底それを欲しがっているやつのところに、必ず届く。
お前が本気で本当のことを知りたいのなら、どこへ行こうと、見つかるよ。

僕が『R.O.D』を手に取ったのは、僕がこの作品を求めたからに他なりません。しかし、僕とこの作品の間には、これから書く感想に先行する優れたレビューとそれを伝えるための情報媒体が存在していました。僕と作品を含めたそれら全てをまとめて、仏教者は「縁」と呼び、僕は「ネットワーク」と呼ぶのです。
ただ、ネットワークにおいて手段の占める重要性はそれほど高くありません。僕にとって重要なのは、インターネットであれ本であれ、そこへ何を載せるかなのです。コンテンツに価値があれば、そのコンテンツは自発的にネットワークを構築するでしょう。そして、それを必要とする人の元へ必ず届く。それは、創作を行う全ての人間にとっての神話であり、現実なのです。
今も昔も、本もアニメも。

R.O.D -THE TV- vol.9 [DVD]

R.O.D -THE TV- vol.9 [DVD]

紙使い三姉妹と休筆小説家の物語は、前作の主人公である読子・リードマンの登場によって新たな段階へ。どちらかといえばキャラクターを描くことの多かった前半にくらべ、後半では大きなストーリーの中でもがくキャラクターたちが描かれていますが、このバランスには若干の危うさを感じます。ま、そこが好きなのですが。
「ストーリーとキャラクター、最初にあるのはどっち?」という問いは鶏と卵にも似ていますが、R.O.Dの場合はキャラクターが最初にあったのでしょう。OVA版でもTV版でも、主人公側は彼女たちのアイデンティティを揺るがす問題と向き合うことを迫られます。OVA版では紙=本=知識の代表者である「偉人」との戦いを通して、TV版では紙=本=物語と現実との関係を問いただす点において。「嘘の話を読んでなんになるの?」この問いを、嘘の話であるアニメの作中で語らせるなんて、実にスリリングではありませんか。
この作品の面白さを点数で言えば、100点満点中の100点です。ただ、一番面白いとは言えない。点数に出来ないセンス、新しさがあまり感じられませんでした。それでも名作であることに変わりありません。音楽の格好良さ、アクションシーンの興奮度、最終回の後味の良さ、全てにおいて文句なし。
たとえ嘘の話でも、それに魅せられた僕の気持ちに嘘はなかった。こんな作品に出会えるから、アニメを見るのはやめられない。
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