佐々木少年『真月譚 月姫(5)』

真月譚 月姫(5) (電撃コミックス)

真月譚 月姫(5) (電撃コミックス)

あれー?月姫ってこんなに面白い話だったっけ?と今更思ってしまった、そんな第5巻。4巻はオリジナルエピソード満載でしたが、今回はほぼ原作準拠。ただ、アルクェイドが原作よりもデフォルメ化された笑い方をするようになって、そこにネコアルクのイメージが侵犯してきたような可愛いさを感じました。また、当時のTYPE−MOONに金と時間があればここには一枚絵を入れただろうな、というシーンは大きく印象的に描かれていて、原作のイメージが上手く活かされています。
5巻で描かれる内容は4巻と6巻の繋ぎ、伏線を張ったり回収したりという地味目なお話が多いです。でも、個人的には斬り合いや説明描写の多い他の巻よりも好き。月姫は冒頭のインパクトが強い作品ですが、それを除けば右肩上がりに面白くなっていく作品だと思います。
正直に言えば、僕にとって原作の月姫は、終盤以外はそれほどでもない作品です。でも終盤は確かに凄い。「終わりの美学」とでも言うべきでしょうか。ハッピーエンドともバッドエンドとも違う、絶望からの出発を描く美しいエピローグ。コミック版も10中8、9あのエンディングだと思いますが、どう描かれるのか気になります。
気になることと言えば、作画の佐々木少年が30年後くらいに漫画界の大御所と呼ばれるような存在になってもやっぱり「少年」なのか、ということも。吉本ばななも文壇の重鎮だぜ。