『クレイモア』の狂った世界とミニマリズム

CLAYMORE Chapter.1 [DVD]

CLAYMORE Chapter.1 [DVD]

人間と妖魔のクォーター・クレアの物語は仲間との出会いと別れを経て、新たな戦いへ。
軽妙でスピード感のあるストーリィ、そして敵と味方の交差する混沌とした世界観……どういう結末に行き着くのか、原作を読んでいる自分にも結末が予想しがたい奥深さというのが魅力的。それに加え、開始当初はどうしようもなく没個性だった敵役にも魅力的なキャラクタが現われ始め、物語はどんどん面白くなっているように思われます。
しかし、物語の構成自体はジャンプ漫画の王道をきっちりと押さえたものだと言えるでしょう。ピンチになると切り札を出す、あるいは助っ人が現われる。主人公の修行シーンは丁寧に描かれる。死んだと思ったあの人が生きていた!こうしてあらすじだけを抜き出すと、いかにも少年誌だなぁという感じがしますね。
しかし、端的に書くと「狂ったリズム」が物語に微妙な違和感を与え、それが独自の魅力となっています。唐突に強敵が現われ、心の準備をするまもなく死んでいくキャラクタたち。RPGに例えるなら、最初の村を出た直後に大魔王が現われて瞬殺される、みたいな。ゲームとしてはダメですが、物語としては面白い。

さて、壮大な設定に対して、この物語で描かれるのは個人の愛情であったり復讐であったりと、主人公の視界の中で物語は進行します。また、そのようなミニマリズム的なタッチというのはストーリィだけなく、演出においても見出すことが出来るでしょう。
例えば人物と背景との関わりにおいて、逆光を利用した効果によって人間を浮かび上がらせたり、あるいは背景をぼかしたり。無駄な空間を画面から排除し、人間を中心にした小さい空間を作り上げる傾向が見られます。確実に美しい背景美術を、とてもそっけなく使っているというのが面白いですね。

原作は背景も白、キャラクタも白で乾いた感じでしたから……。ま、あれはあれで好きなんですけど、綺麗に色が付いて「アニメになって良かったなぁ」としみじみ思います。
あと、音楽。ニコニコで見ているとそれはもう酷い叩かれぶりですが、個人的には結構好きです。BGMがこんなに自己主張して良いのだろうか、とは思いますが。
考えてみると、画面の暗さは視聴者に「目を凝らすこと」と要求し、BGMは音楽に「耳を傾けること」を要求するわけです。こうして感想記事を書く者としては、結構真剣に見てしまうアニメなんですよね。