『ジャッカルの日』−とても静かなマスターピース

舞台は1960年代のフランス。アルジェリアの返還を決定した当時の大統領ド・ゴールに対して軍部の右派が反発、暗殺を企てますが失敗に終わりました。それでも諦めきれない彼らは「ジャッカル」という暗殺者を雇い、計画の続行を決意します。
この物語は経歴不詳かつ凄腕の暗殺者「ジャッカル」と、彼の犯行を阻止しようとする警察の戦いを描いた1973年公開のサスペンスです。いやもう、本当に傑作ですよ旦那(誰だよ)。

暗殺者と警察の戦い、と言えば『DEATH NOTE』が記憶に新しいところですが、この作品にキラやLのような天才肌の人物は登場しません。『ジャッカルの日』で描かれるのは、私情を挟まず、抜け目なく、完璧な「プロフェッショナルたち」の姿です。
名前も性別も、どこにいるかもわからない謎の暗殺者。そんなもん見つけられるか、と言いたくなるような相手を見つけてしまう警察の凄さもさることながら、名前を変え姿を変え、少しずつ標的に近づいていくジャッカルもまた凄い。この間一切の音楽がかからず、緊張感だけが画面を支配します。
それにしても、この映画は実に静か。音楽がないだけでなく、台詞が厳選されているという印象を受けます。僕らには彼らが何を考えているのかを知る術はなく、ただ静かに戦い続けるのを見守るだけ。日本人がこの手の映画を作ると、主人公に自分の思想信条をべらべら喋らせる傾向があるのですが、『ジャッカルの日』はそういう鬱陶しさを全く感じさせません。
ちなみに、ジャッカルの標的がド・ゴール大統領という実在の人物である以上、結末がどうなるかは誰にだって予測できるでしょう。しかし、映画が終わるまでの2時間半の間、一瞬たりとも退屈することはありませんでした。
サスペンスの金字塔として全方位的にオススメの作品です。これを見ずに死ねるか!という感じですよ、ホント。