ひだまりスケッチ(漫画)と表情

やまぶき高校美術科に通う「ゆの」。そして彼女と同じ「ひだまり荘」に住む同級生の「宮子」、階下に住む先輩の「ヒロ」「沙英」など、個性的なようでそれほど個性的ではない人々の日常の姿を描いた4コマ作品。
現在放送中のアニメ版の出来が中々よかったので、興味を持って原作にも手を出してみました。

ひだまりスケッチ (1) (まんがタイムKRコミックス)

ひだまりスケッチ (1) (まんがタイムKRコミックス)

アニメ版との大きな違いは「背景に対するこだわり」でしょうか。アニメ版では背景の見本市と化している感がありますが、漫画版では背景をトーンで済ませることが多く、非常にシンプルな物となっています。
もうひとつ、「萌え4コマ」というジャンルにそれほど触れていないのでサンプル不足ですが、4コマ目のオチではボケ役が正面を向き、ツッコミ役は読者に背中を向けているというパターンが非常に多かったですね。それと関係してか、ボケにはキャラクタの個性が表れるのですが、ツッコミはそうでもない、むしろ読者と同じ方向を向いているために「読者の良識」を代表することに徹していると言えるでしょう。
日常を描く『ひだまりスケッチ』の中で、オチだけが非日常であると言えます。現実の日常にはオチなんてありませんからね。そこで、せめて「読者の良識」を導入することでリアリティを保とうとしているのでは、などと色々考えたのですが、まあ、大抵の漫画で普通にやっていることかもしれません。
ただ、背中を見せたキャラクタは読者の位置まで降りてくるということは、それだけキャラクタの存在に占める「表情」の割合が高いということを表しています。大抵の漫画がそうなのでしょうが、『ひだまりスケッチ』の場合は特に表情の変化が激しいですね。少女漫画風の端正な表情から、肉まん、あるいはハンバーガくらいに潰れた「緩い」表情まで、バリエーションは非常に豊富です。
逆に言えば、表情が見えないときキャラクタの個性はほとんど消えてしまいます。背中を向けてツッコミを入れているとき、それは「ゆの」でも「宮子」でも、「クラスメイトA」でも構わない。同じ画面に入っていても、ボケ役以外のキャラクタが立たない。そこが気になるところではあります。
要するに、ツッコミのパターンに乏しいというのが短所かなぁ、と。典型的であるだけにネタがネタだとわかりやすいという点では長所でもあり、なかなか評価を定めづらい作品です。
ただ、誰が読んでもそれなりに楽しめる作品ではあると思います。作者に前世からの宿縁を感じる人や、1日に1回萌え4コマを読まないと死んでしまう体質の人には特にオススメです。