_summer(OVA)と「物語臭さ」

隣りに住む幼馴染。活発なクラスメイト。義理の妹。妹の親友。学園のヒロイン……
これでもか、というくらいに恋愛のチャンスを与えられつつ、動こうとしない主人公。けれど、「ずっとこのまま」ではいられない。
今日は、そんな青春の時間を大胆に切り取ったHOOKの大ヒット(したらしいよ)PCゲーム原作のOVAを紹介します。

_summer season.1【特別版】 [DVD]

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原作は未プレイなので比較するべきではないのでしょうが、はっきり言って、いかにも「エロゲ原作」という感じの作品でした。みんな異常によく喋ります。ちょっと黙っとけ。それに、表情の変化とか、微妙な「間」の置き方とか、静止画メインのエロゲとは違う表現手法がアニメにはたくさんあるのだからそっちを使えば良いのに、という感じがします。
あと、ストーリィには前置きと呼べる部分が全くと言ってよいほどありません。いきなりヒロイン全員と知り合いで、さらに毎朝幼馴染が朝食を作りに来るというリアリティ皆無の設定があるにも関わらずその説明もなし。何というか、この作品は自分のおかしさを取り繕おうとしないのです。
それだけに、媒体が作品に与える影響がはっきりわかって面白いですね。「物語臭さ」がどのようにして隠蔽され、リアリティが与えられるのか。この作品では全然隠蔽されていないために、逆にそんなことを考えさせられました。
ゲームの場合はプレイヤーの選択を主人公の選択だと錯覚させる幻想がそれに当たるでしょう。アニメの場合は何か?映像として描かれている以上の内容があるという幻想、そして読者はそれを読み取っているのだという幻想。この2重の幻想によるものが大きいのではないでしょうか。つまり、読者に気付かれることなく読者を物語に巻き込むメカニズムですね。
「何を」語るかではなく、語ること自体が「物語」であり、同時に語らない部分が現実との繋がりになっている。僕はそんな風に考えています。あんまり根拠のない考えではありますが。
ついでに付け加えておくと、wikipediaの紹介を参考にしつつ、こちらのサイトでPC版とOVA版のキャストを比較してみると面白いと思います。これが「大人の事情」というヤツか、という新鮮な驚きが得られるかもしれません。
ちなみに僕は「そんなのなれっこさ。へへーん」という、悪い意味で擦れた人間なので、全然驚きませんでしたが。まあ、世の中そんなものです(どんなもんだ?)。