『Canvas2 〜虹色のスケッチ〜』に見るアニメ化と強制力の補填

『ひだまりスケッチ』に見る美術部アニメの可能性
美術部アニメ……何かを忘れている気がする。
うーんうーん。何だっけ……ほら、アレだよアレ。アレって何だ?だから、その、あの。
……『Canvas2』だ!
というわけで本日は『Canvas2 〜虹色のスケッチ〜』の話です(白々しい!)。

主人公の「上倉浩樹」はかつて画家になることを夢見ていたものの、ある事件をきっかけに夢を諦め、美術部顧問として撫子学園へやってきます。彼と、絵画の特待生として撫子学園に入学した従妹の「鳳仙エリス」、幼馴染で撫子学園教師の「桔梗霧」。『Canvas2』ではこの3人をメインとして、様々な悩みを持つヒロインたちとの交流が描かれることになります。
さて、主人公をはじめとする登場人物たちに見られる大きな特徴としては、彼らは一様に心理的な問題を抱えつつも、その問題を環境、あるいは物理的な問題に置き換えることで安定を保っているということが挙げられます。言い換えるならば、全ては自分次第であるにも関わらず、過去のトラウマや家族に「出来ない理由」を求めている、ということ。この傾向は主人公に最も顕著ですが、他のヒロインたちも同じようなものです。
つまり、『Canvas2』は結局のところ、現実から逃げ出した登場人物たちがどのようにして立ち直るのか、というありふれた物語であると言えるでしょう。
ここで注意するべきことは、ゲーム版において主人公を立ち直らせるのは、ヒロインではなく、プレイヤー自身に他ならないということです。ヒロインがどれだけ素っ気無くても、必然性がなくても、プレイヤーが選択肢という魔法の力を借りて主人公をヒロインの元へ向かわせることで物語を進めていきます。主人公の内面的な変化を問わず、ただ選択肢によって既成事実を積み上げていく。
それがゲーム版における主人公の立ち直らせ方です。そもそも選択肢を選ぶのは主人公ではなく、プレイヤーなのだから、主人公の内面性なんて関係ないない。「流れるような美しさ」もなければ「有機的な繋がり」もない。ただ「プレイヤーによる強制力」があるだけです。
そのため、アニメ版においてゲーム版との繋がりを残すためには、この「プレイヤーによる強制力」を何らかの形で補う必要が出てきます。どうやって「上倉浩樹」を、「鳳仙エリス」を動かしていくのか?強制力の消失と補填、これはゲームをアニメ化するにあたって付きまとう、普遍的な問題であると思います。
そこで考えられるのが、登場人物の追加、あるいはヒロインをひとりに絞り、残りをサブヒロインとしてサポートに専念させるという手法ですね。現在では嫌になるほどありふれた手法ですが、本作ではそれが、かなり露骨な形で行われています。
サポートといえば、悪名高い(と僕が思っている)『D.C.S.S.〜ダ・カーポセカンドシーズン〜』にも「サポート部隊」という主人公の世話焼き集団がいましたね。主人公がダメになるほどサポーターが増えるという……
あ、ネガティブな印象をもたれるとアレなので一応フォローしておきますが、それなりに面白い作品だと感じました。追加ヒロインは可愛いし、ストーリィは奇抜すぎず落ち着いているし、ちょいエロだし(EDが)。でも一番面白いのは次回予告だという罠。
関連記事へのブックマーク