ゼウスガーデン衰亡史

ここに来るもの 男女の差なく 老若の差なく 貴賎の差なく 貧富の差なく 美醜の差なく 賢愚の差なく 
ただひたすらに 楽しめ 楽しめ 楽しめ

ずいぶん前に筒井康隆小林恭二の『ゼウスガーデン衰亡史』を絶賛している書評を見て以来、いつかは読もうと思っていました。そしてついに、Amazonで注文し、定価の倍で入手しました。1冊の本にここまで拘ったのは初めてかもしれません。だって、尊敬する筒井先生のおすすめだもん。書評家の推薦より、好きな作家の推薦の方がずっと当てになる法則。

ゼウスガーデン衰亡史 (ハルキ文庫)

ゼウスガーデン衰亡史 (ハルキ文庫)

1984年から2075年までの約90年を舞台に、「ゼウスガーデン」という遊園地(?)が誕生して滅びるまでを描いた物語です。
と、簡単に解説してみましたが、これでは全然伝わりませんね。
何と言うか、偽史ものに近いのかもしれません。しかし、よくある架空戦記もののような半端に現実と虚構をミックスしたものではなく、1から10までが虚構なのです。
この世界では、貿易でも生産でもなく、遊ぶことが経済の中心(!)となっています。そのため、ある天才兄弟が設立した「ゼウスガーデン」は日本の、そして世界のあらゆる事象を取り込みつつ、ついには国家として独立を果たすことになります。
「国家」ゼウスガーデンは代表者の権力闘争、暗殺、元老院の設置、皇帝の誕生と現代版『ローマ史』のような運命を辿り、ついには滅亡。もう、めちゃくちゃなスケールです。凄過ぎ。
そして、ただスケールが大きいだけではなく、細部の設定が非常に緻密なのも素晴らしい。「遊園地」という括りからは決して想像できないアトラクションが次々と登場します。「人間のありとあらゆる官能を刺激するように作られた山車」とか。人間はここまで考えられるのか、というすごさを感じました。
これを書いている間、小林恭二は間違いなく天才だったと断言できます。やはり、筒井先生の推薦に間違いはなかった。激しくお勧めです。