『バンブーブレード』−アニメ原作としての剣道
昔、僕が剣道少年だった頃、やはり高校の剣道部員だった姉から聞いた話。
男子の試合で、おそらく重要な試合だったのでしょう、勝負を決する一本を取った後、ガッツポーズをしたために一本を取り消された人がいたそうです。
剣道試合審判規則第27条
試合者に不適切な行為があった場合は、主審が有効打突の宣告をした後でも、審判員は合議の上、その宣告を取り消すことができる。
ルールを知らない(あるいは忘れていた)そいつが悪いといえばそれまでの話。ただ、僕は剣道のそういうところが好きじゃないのです。あまり剣道に良い思い出がないので言いたい放題ですが……。
という話を『バンブーブレード』見ながら思い出していました。
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『バンブーブレード』第6話より、練習試合の替え玉大将として現われた珠姫に、とっさに偽名をつけようとするシーン。
「遅かったじゃないか!え、えーっと……えー、あの、ねぇ……?えー……。
武礼葉(ブレイバ)!
武礼葉!1年9組武礼葉!遅かったじゃないか武礼葉!はやく着替えろ武礼葉!武礼葉ったら武礼葉!」
(え、えー……)
さて、板垣恵介の『バキ』にサムワン海王というムエタイ使いが出ていましたが、その彼がこんなことを言っていました。
(”気””呼吸力””発勁”)
(全てまやかしだッッ)
(武術と言えども所詮は運動能力を競うもの)
(いかに合理的に肉体を使うかの世界)
(そこに魔法は存在しない!)
(より疾くッッ)
(より疾くッッ)
(より疾くッッ)
(そしてより短時間に―――――だ)
そう言った彼が直後に瞬殺されるため、この台詞も説得力に欠けるのですが、武道の原則としては確かにそのとおり。地上最強の生物も「お前は間違っていない」と言っていましたよね(例えがどれも不適切な気が)。
その点、剣道の初心者・宮崎都が野球のピッチャみたいに「おおきく振りかぶって」いるのはいかにも初心者っぽい。
それとは対照的に、まあまあ上手いという設定の部長が「払い小手」を打つなど、いかにも面倒そうな試合の描写を頑張っているなぁと思うのですが……ただ、打った後の「残心」が経験者を含めイマイチな感じ。
「残心」というのはつまり、打った後に隙を生じないようにするために〜とか色々理屈はあるのですが、要するに「今、面で一本取ったよ!見た?見た?見たよね?」というアピールのことです(暴論)。例えば面ならこんな感じ。
でも、これだとちょっと変。
実際に面を打つ真似すると分かりますが、自分より背の高い相手を打った後にこういう構えになることは考えられません。要するにリアリティより迫力のある構図を選んだわけで、そこがアニメらしいと言えるのですが、原作信者よりも理不尽な題材信者(つまり剣道好き)な僕としては気になるところです。
もうちょっと分かりやすい問題点としては、やはり足捌きの重たさが挙げられるでしょう。打った後にバタバタしすぎ。もっとこう、ササササ、という感じにしてほしい(わかりづらいな)。
枚数が単純に足りてないというだけの話ですが……。
WEBアニメスタイルの連載で脚本家の首藤剛志氏が「ナイアガラの滝を舞台にしたアクションシーンを平気で書いてくる」シリーズ構成を「制作状況を全く考えていない」と批判していたのを思い出しました。
TVアニメで、流れる川や水、飛び跳ねる鮭など要求するほうが間違っている。
現在の劇場アニメでも、水の表現はCGを駆使してやっとこ観賞に耐えられるかな?……という状態である。
滝……流れ落ちる膨大な水の中のアクションが、CGを多用する映画ならともかく、TVアニメのスケールでできるはずがないのである。
僕から見た『バンブーブレード』もそんな感じで、文句を付けるのも野暮かな、と思います。せっかく書いたので載せますが。
一流の剣士の試合をアニメ化することがいか難しいか、下の動画を見ればお分かりいただけるでしょう(ニコニコのアカウントがない人はごめんなさい)。
もう一度 ゆとりのない剣道 宮崎vs栄花 - ニコニコ動画
最後の面返し胴の格好良さといったら!やっぱり剣道は面白いです(ただ、もう一回自分がやりたいとは思わない)。